恥ずかしながら、先日のカヤックフィッシングで漂流してしまいました。
なんとか自力で着岸したのですが、無事に帰ってこれたのは幸運だったと思います。
これまで「まさか自分が漂流するなんて」と他人事のように思っていましたが、実際に遭遇するとものすごい絶望感に襲われました。
これを機に、カヤックフィッシングの危険と対策について考えてみたので、私なりの出艇条件とあわせてご紹介します。
カヤックやSUPで釣りをされる方、始めたい方にもこの漂流経験を他山の石として知ってもらい、カヤックによる事故防止に役立てていただければ幸いです。
- ライフジャケットを着用する
- 予備のパドルを積んでおく
- 携帯電話は防水ケースに入れて、身体から離さない
- 出艇場所と帰宅予定時間は家族に伝えておく
- 再乗艇の練習は絶対にしましょう
※当記事で紹介する対策等はアマチュアカヤックアングラーの私が考えた個人的な考えです。
※私はカヤックのガイドでもプロでもなんでもありません。
※信じる・信じない等、あくまで自己責任でお願いします。
- 身長172センチ、体重65キロ
- バイキングカヤックのプロフィッシュ45を使用
- 無風ベタ凪で巡航時速7キロ、最高時速9キロ
漂流してしまった状況
この日は波1メートル、平均風速3メートル予報の凪の日でした。
予報どおりのベタ凪で油断していたのかもしれません。
いつもより遠くまで漕いで、風と潮まかせにカヤックで流し釣りをしていたときのことです。
ふと、海面が流れ出し川の流れるような音がすることに気がつきました。
GPS魚探を確認すると風は弱いのに時速6キロ前後と、これまで経験したことない速さで流されています。
どうやら海岸と並行に速い潮が流れているようでした。
出艇した場所へ戻ろうと思い、慌てて流れに逆らうように漕ぎますが、ものすごい速さの潮流に加え、追討ちをかけるような若干の向かい風、漕いでも漕いでも進まない状態です。
2時間ほど流れに逆らうように漕ぎ続けましたが、全く進まず、漂流してしまったことに気がつきました。
ある人から「流れに対して直角に進むと良い」と教えられたことを思い出し、流れとは垂直に海岸方向へ漕いでみると少しずつですが海岸には近づけました。
しかし、高さのある磯であるため上陸するにはカヤックを乗り捨てなければなりませんし、磯を這い上がるにはある程度の怪我を覚悟しなければなりません。
磯付近も相変わらずの激流で出艇場所の方へは進むことができない状態。
このときは恐怖と絶望感、疲労感でパニックになりそうでした、、、、、、
最終的には、出艇場所へ戻るのは諦め、潮下の方へ陸地と並行に10キロ以上を漕いで、なんとか別の砂浜へ上陸することができました。
もちろんこの後は車を取りに長距離を歩かなければなりませんでしたが、なんとか誰にも迷惑をかけずに無事に帰ってこれました。
もしあのとき、
・沖への潮向きだったら
・予報外れの爆風が吹いたら
・パニックになってしまったら
自力では帰れずに、118番通報して海上保安庁のお世話に、、、最悪の場合は命を落としていたかもしれません。
カヤックフィッシングの危険と対策を考えてみました

沖に出たら何かトラブルがあってもすぐには誰も助けてくれません。
海上での緊急電話は118番ですが、広大な海ですぐに発見されるとは限りません。
「大丈夫だろう」と安易に出艇すると私のように痛い目に遭いますし、運が悪いと命を失います。
漂流
海には風や潮流があり、それらの力がアングラーの漕ぐ能力を上回ったときは漂流してしまいます。
予備のパドルを積んでいない場合、パドルが流出したり破損した場合も漂流します。
今回私が失敗したのはコレですね。
自然の力には敵わないことを身をもって学びました。
- 天気予報で風速・風向について確実に確認
- 潮流の速い海域ではカヤックフィッシング自体を行わない
- 体力、パドリング技量を過信しない
- 万が一に備え、水分と軽食を余分に積んでおく
風速の予報を確認するには『windy』というアプリがおすすめです。
アプリ内の設定で、『ECMWF』というヨーロッパ中期予報センターの予報を見れるようにしていますが、風の予報に関してはかなり正確なように感じます(あくまでも予報なので、絶対ではありません)。
設定で風速の単位を一般的なm/s(秒速○メートル)に変えておきましょう。
船舶との衝突事故
海上では他の船舶も航行していますし、陸上とは異なる交通ルールがあります。
フィッシングカヤックは海の上では最弱者です。
他の船舶との衝突事故になれば、自己に過失があろうとなかろうと大怪我、最悪の場合は命を落とします。
他の船舶が避けてくれると過信するのはやめ、その動向には十分注意しましょう。
大抵の船舶はカヤックから十分離れたところを通り過ぎたり、近くを通る際に親切にもスピードを落としてくれる方も多いです。
しかし、危険な操縦をする輩もいます。
カヤックで釣りをしていると、プレジャーボートが凄いスピードで近寄ってきて、『いぇーい!!』と奇声をあげ、引き波を立てながらカヤックの周りをぐるぐると周回されたことがあります。
乗っていたのは若い数人の男でしたが、彼らは何も考えてないのでしょうね。
- 派手な色の旗(フラッグ)を目立つ高さに掲げましょう。
- 周囲の船舶の動向に注意を払いましょう。
- 航路での釣りは危険です!絶対にダメです!
船酔い(カヤック酔い)
カヤックも船と同様に船酔いします。
船と決定的に違うのが、カヤックのエンジンは釣り人自身だということです。
船では酔ってもエンジンが付いているので進むことができます。
しかし、カヤックで酔い潰れてしまうと、エンジン(釣り人自身)が正常に機能しません。
カヤックの場合、船酔いでダウンしてしまうとそのまま漂流してしまうので注意が必要です。
- 前日は十分な睡眠をとりましょう
- 船酔いが不安な人は酔い止め薬を飲んでおきましょう
転覆
私はこれまでカヤックでは今まで転覆したことはありませんし、転覆しそうになったこともありません。
しかし、カヤックで釣りをする以上、転覆する危険は常にあります。
- ライフジャケットの着装、これは絶対に守りましょう!!!!!
- ライフジャケットは再乗艇しやすい形状のものを選ぶ
- 再乗艇の練習をしておく
大型サメの脅威
カヤックフィッシングのポイントは沖の瀬周り、そこは釣りのターゲットとなる青物やマダイがエサとなる小魚(ベイトフィッシュ)を捕食しており、弱肉強食の生態系のド真ん中です。
青物やマダイも彼ら以上の大型魚(中型のサメ)から食べられる存在であり、下手すれば人間をも捕食するサイズの大型のサメがいる可能性は大です。
カヤックに乗った人間は、地上とは違って、海上では生態系の頂点に立てません。
これまで私が目撃した最大サイズは、釣りあげているマダイに食いつこうとした3メートルほどのサメ。
明らかに自分より大きなサメを間近に見ると、恐怖を感じるほどの迫力があります。
地元の漁師の話では5メートル級のホオジロザメもいるとのことです。
2022年3月、ホオジロザメと思われる大きなサメと遭遇してしまいました。
目撃しただけ、襲われはしなかったのが不幸中の幸いでした。
自分より遥かに大きな巨体、あまりの迫力に、カヤック上で身動きができませんでした。
カヤックフィッシングをされる方は、魚の血抜きなど、サメを興奮させるような行為などに十分注意することを強く勧めます。
まさか自分が遭遇するとは思いもしませんでしたが、恐ろしいほどの大きさのサメが本当にいます。
その時の出来事についてはこちらの記事で紹介しています。

- 釣りあげた魚は速やかにクーラーボックスにしまう
- 魚の血はできる限り海中に落とさない
- カヤックはできる限り大きなものを選択する
サメ対策を考えてはみましたが、正直なところ、サメの襲撃を確実に防ぐことは不可能でしょう。
確率を減らすことはできそうですが、それでも運が悪ければ遭遇しますし、襲われると思います。
カヤックやSUPが盛んな海外では死亡事故も起こっているみたいです。
ネットで検索してみると、海外のものではありますが、カヤックで遊泳中に巨大なサメに襲われる恐怖映像も出てきます。
私なりの出艇条件

※出艇できる条件は、漕ぎ手のパドリング技量や体力、カヤックの性能、釣りをする海域等で釣り人ごとに変わってきますので、あくまで参考程度にお考えください。
例えば、オリンピック・カヌースラロームの羽根田選手のようなパドリングのプロであればかなりの海況でも出艇できると思いますが、初めてカヤックを漕ぐ人であればこの出艇条件でも漂流する危険があると思います。
自分が安全に楽しめる条件がわかるまでは、経験豊富な方と一緒に出艇することを強くおすすめします。
- 平均風速3メートル以下
- 波1.5メートル以下
これはあくまで予報での判断です。
私ならこれ以下の予報なら、とりあえず釣りの準備をして海岸に行きます。
あとは現地で海の状況を目で見て、出艇するか判断しています。
風速
これまでの釣行で分かってきたのは、カヤックで釣りが成立するのは平均風速3〜4メートル以下の予報のときです。
これまで平均風速5〜7メートルの予報でも出艇してみたことはあります。
平均風速5メートル予報では、風が強すぎて釣りが楽しめないほど。
平均風速6〜7メートル予報では、身の危険を感じるほどのまさしく爆風で、風に逆らうのが難しくいつ漂流してもおかしくないレベルでした。
風には特に注意する必要があります。
岸から沖向きオフショアの風の場合は逆行できないと漂流しますので、釣りをしている最中も風の強さや向きは敏感に感じ取っておく必要があります。
予報が平均風速4メートル以下でも、急に爆風が吹きだして海上が時化ることもあります。
波高
快適に釣りができるのは1.5メートルが限界に感じます。
波2メートルで出艇してみたこともありますが、カヤックを漕ぐこと自体は波2メートルでもできました。
しかし、釣りは快適にはできません。横から波をくらえば油断していると転覆しそうな波高だと感じました。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございました。
カヤックフィッシングでの漂流等の救助事案は毎年何件も起こっているようで、残念ながら死亡事故も起こっています。
今回私自身も漂流してしまい、なんとか自力で帰っては来れたものの、色々と考えることがあったのでこの記事で紹介してみました。
カヤックフィッシングをされている方、これからしてみたいと興味を持っている方の参考になれば幸いです。
コメント
コメント一覧 (3件)
[…] カヤックフィッシングの危険と出艇条件!漂流した経験から対策を考察 […]
[…] WFK宮崎の松本さんの優しい人柄にも惹かれました。カヤックは釣り人の命を預けるものですので、信頼できるメーカーや職人さんから買いたいものです。怖がりな私からすると、個人的にはかなり重視している点です。何キロも沖の海上は陸上生物からすると危険極まりない環境です。よくわからないメーカーのカヤックでは安心して釣りできません。カヤックフィッシングなどのアウトドアは危険を伴う遊びですので、怖がりなくらいが丁度いいんです。 […]
[…] 力尽きてカヤックを漕げなくなれば、漂流してしまうからです。 […]